特集 事業承継を考える! vol3 ~徳川家康型の事業承継~

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徳川家康は、300年余り続く江戸幕府の礎を作った偉大な人物ですが、

この徳川家康の凄まじい点を事業承継の点から考えると、やはりその「承継の仕組み」を作った点ではないでしょうか。

 

 

徳川家の跡継ぎのルールを決め、将軍を支える要職のルールを決めた。

 

つまり、跡継ぎで揉めないようにルールを明確にし、誰が将軍でもそれなりに幕府が機能するように要職を固めた。

まさに自分の死後も徳川家の繁栄が続くように、「仕組み」を作ったといえます。

 

その後、生前に将軍職を秀忠に譲り、自分は駿河に隠居した。

 

隠居したとしても家康の影響力は強く、秀忠が独り立ちできるように見守っていたと考えられます。

これは、まさに事業承継のモデルケースといえるのではないでしょうか。

 

これを事業承継で考えると、以下のようなこととになります。

 

・会社の跡継ぎを予め決定
・財産の配分も予め決定
・経営の実務経験も十分に積ませる
・2代目が経営できる仕組みを構築する
・2代目と右腕となる人物を選別する

 

では、A社においてどのような対策が考えてられるか考えてみましょう。

 

 

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以前より、顧問税理士より「事業承継のことを考えた方がいい」と提言されていたPだが、まだまだ働けるという意識であったため、特に気に留めていなかった。

 

しかし、65歳を超えたPは、自分の体の衰えを感じ、
そろそろ会社経営を承継させていく必要があると考えるようになっていた。

 

事業承継を進めるといっても、どのように進めていいかわからないPは、顧問税理士のところに相談しに行った。

 

顧問税理士との協議の結果、A社の事業承継を円滑を行うために、以下の点について対策を考え、実行することとなった。

 

①跡継ぎであるSに株を集約する方法を検討すること
②株を集約する際に贈与税、相続税の対策を検討すること
③Sに十分な成功経験を積ませ、社内外の信頼を与えること
④タイミングを見計らってSを社長に就任させ、Pは会長に退くこと
⑤Sが経営判断を適切に行えるように、経理部門を強化すること
⑥Sの右腕となるような人物を育てること(理想は営業に強いもの、財務に強いもの2名)

 

~跡継ぎであるSに株を集約する方法の検討~

 

Pはかねてより、
Sに会社を継いでもらいたいと考えていたが、Sの妹であるDにも財産を残してやりたいと考えていた。

仕事一筋であったPの財産は、A社株式に偏っており、どうすればいいか思案していた。

 

SにA社株式を全て承継させては、不平等が生じ、かといって株式をDと分けてしまえば、Sの経営権が揺らいでしまう。

そのことを顧問税理士に伝えると、以下のような提案をされた。

 

<提案内容①>

現在保有している普通株式の一部を、優先配当付き無議決権株式に変換し、それをDに承継させる方法

 

<提案内容②>

Sの経営権が揺らがない範囲で、普通株式をDに承継させる方法

 

全株式を一人で保有しているPは、株主総会の運営に関する知識が乏しく、漠然と株式が分散すると経営権が揺らぐと考えていた。

 

株主総会で決定しなければならない事項とその決議を通すために必要な議決権数について、説明を受けたPであったが、

さらに次世代への株式の承継を考えた場合、普通株式を必要以上に分散させることに懸念があることから、今回は提案内容①を採用することなった。

 

提案内容①により、Sが経営権を全て掌握する一方で、財産権のみの株式をDに承継することが可能となった。

 

 

~株を集約する際の贈与税、相続税の対策の検討~

 

Pの保有する財産の比率が、実質的な換金価値の乏しいA社株式に偏っていることから、贈与税、相続税の対策が必要課題となった。

つまり、そのまま贈与、相続が起こってしまうと、承継する現預金から贈与税、相続税を支払うことができなくなってしまう

このことについて、相談した結果、顧問税理士よりある提案をされ、それを実行することとなった。

(ある提案の内容については割愛します。)

 

 

 

~Sに十分な成功経験を積ませ、社内外の信頼を与えること~
~タイミングを見計らってSを社長に就任させ、Pは会長に退くこと~

 

経験や実績に勝るPは、Sの仕事についつい口を出してしまいます。

そのため、一向にSが社内外から信頼を得ることができません。

 

顧問税理士から「しっかりとSを独り立ちさせなければ、次世代の発展は見込めない」と提言されたPは、

思い切って、A社の更なる発展のために必要と考えていた海外進出のプロジェクトをSに任せることとなった。

 

 

Pは社内でも経験豊富なBをSの補佐に充て、万全のチーム作りを行ったが、自身はプロジェクトチームから外れることとなった。

他にも重要な顧客や取引先との交渉やあいさつにも必ずSを同行させ、顧客への提案等もSから実施することとなった。

 

 

また、3年後にSに社長職を引き継ぎ、P自身は会長職に退く旨をS及び経営幹部に伝達した。

 

 

~Sが経営判断を適切に行えるように、経理部門を強化すること~

 

顧問税理士いわく、

「創業社長であるPは、月次決算や部門損益を精緻に行わなくても、肌感覚で業績や資金繰りの状況を把握することができた。
しかし、2代目となるとそうはいかない。自社の状況や業績のいい部門、改善の必要な製品など様々な情報を客観的に把握していく必要がある。」

 

社長となれば、肌感覚で状況を把握できると思っていたPであったが、現実は違うようだ。

S自身も、自社の状況や業績把握を理解できていないようだったので、経理部門を強化し、月次決算、部門別損益把握ができる体制を整えていくこととなった。

 

 

~Sの右腕となるような人物を育てること~

 

企業の経営は社長一人で支えるのはかなり無理があります。
営業や財務を任せられる右腕となる人材がいるかどうかで、企業の成長スピードや安定性は大きく異なってきます。
それは、2代目となればなおさらです。

かといって、現在の社長の右腕は、現在の社長と同世代であることが想定されるため、右腕たちの世代交代も必要になります。

 

現在の営業部門の部長に、Sと同世代で将来右腕になりうる人物を挙げてもらい、海外進出のプロジェクトチームに加えることとなった。

財務部門については、適任者がいないことから、外部からの登用を進めるとともに、Sへの経営数値の読み方などの指導を顧問税理士に依頼することとなった。

 

 

~事後の百手に優る事前の一手~

 

このように、経営権の集約から実際の経営の承継まで、
PとSが対策をとった場合、前回の記事で書いた「織田信長型の事業承継」よりも円滑に事業承継を行えることは明らかだと思います。

 

ここまでしても、全ての問題を解決することはできませんが、年数をかけてしっかりと対策をとれば、円滑に事業承継を行うことはできます。

上記はあくまでも事業承継の一例ですが、実例を想定して記載いたしました。皆様の参考になれば、幸いです。

 

事業承継を全て社内で実施することは難しいと思います。

弊社でも事業承継をサポートしていくことができますので、お困りの方はお気軽にご連絡くださいませ。

 

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