企業会計基準委員会 収益認識に関する会計基準(案) 公表について
皆さん、こんにちわ
今日は、7月20日に企業会計基準委員会より公表された「収益認識会計基準(案)」をテーマにいたします。
【収益認識会計基準とは・・】
収益認識会計基準とは、収益に関する会計処理につ いて定めることを目的とされた会計基準です。
収益とは、簡単に言うと「売上」です。
つまり、大まかには売上の会計処理について定めた会計基準と考えても良いと思います。
本会計基準の範囲に定める収益に関する会計処理 については、「企業会計原則」にも定めがあります。
しかし、企業会計原則よりも、本会計基準が優先して適用されるので留意が必要です。(収益認識に関する会計基準(案)に明記されてます。)
企業会計原則自体は古い会計原則なので、当然といえば当然ですが。。
【そもそも日本には存在しなかったの?・・】
日本の収益認識に関する会計基準は上述の企業会計原則程度しかありません。
それも「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の 販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」(企業会計原則 第二 損益計算書原 則 三 B)と記載されている程度です。
この一文だけで、今までやってきたのが不思議でなりませんね。
つまり、企業会計原則以外に収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていなかったのです。
もちろん包括的な会計基準が存在しなかっただけで、適宜「工事契約会計基準」や「ソフトウェア取引実務対応報告」などで別個補完しています。
【基本的な考え方は・・・】
では、収益認識に関する会計基準(案)の基本的な考え方をみてきましょう。
収益認識に関する会計基準(案)では、収益認識に関して以下の基本となる原則を示しております。
<同基準第13項抜粋>
本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことである。
よくわかりませんね。
さらに、収益を認識するための5つのステップも示しています。
<同会計基準14項抜粋>
(1) 顧客との契約を識別する。
(2) 契約における履行義務を識別する。
(3) 取引価格を算定する
(4) 契約における履行義務に取引価格を配分する
(5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
つまり、
①法的に強制力のある権利義務を識別し、
②収益認識側の義務を識別し、
③収益認識側の権利の額を算定し、
④収益認識側の義務が複数ある場合は、全体の権利の額をそれぞれの義務に配分し、
⑤義務履行時、若しくは履行に応じて収益を認識する
ということだと思います。
すいません。わかりにくいですね。
それもそのはず、この会計基準は国際会計基準(IFRS)の考え方をほとんど踏襲してます。
もともと読みにくい国際会計基準を踏襲しているので、わかりにくくて当然です。(言い訳です。すいません。)
もう少し、簡単に言うと、
履行しなければいけない義務を認識して、識別した義務ごとに、対価の額を割り当てて、各々の義務履行時に収益を認識しなさいってことですね。
履行しなければならない義務に着目し、義務ごとに対価を割り当てて、認識していくということです。
いかにもIFRSらしい考え方です。
わかりやすく理解してもらうために簡略した例で考えてみます。
例:建設会社A社 広大な敷地にマンション3棟の建設を請け負いました。
請負金額は総額で20億円とします。
ステップ(1) 顧客との契約を識別する。
→X社は、マンション3棟(A棟、B棟、C棟)を建設し、顧客より20億円の支払いを受ける。
ステップ(2) 契約における履行義務を識別する。
→X社は、マンション3棟を建設する義務を負っている。
ステップ(3) 取引価格を算定する
→X社と顧客との取引価格は20億円である。
ステップ(4) 契約における履行義務に取引価格を配分する
→A棟 10億円
B棟 7億円
C棟 3億円
ステップ(5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する
→A棟 引き渡し時 10億円の収益を認識する
B棟 引き渡し時 7億円の収益を認識する
C棟 引き渡し時 3億円の収益を認識する
とまあ、こんな形に整理できると思います。
もちろん、会計基準内には5つのステップそれぞれに詳細な取り決めがあります。
例えば、値引きの配分やA棟、B棟、C棟への配分方法や、履行義務の充足時点の考え方などがあります。
上記の例のように、大きな概念で理解してもらって、
詳細な検討される場合は、本会計基準をもう少し読み込んで頂けると良いかと思います。
【日本企業への影響は・・・】
収益の額や認識時点に影響があると考えられます。
日本の商慣習では売上であったものが、売上でなくなる可能性もあります。
また、売上を計上する時期が変更となる可能性があります。
例えば、百貨店で見てみましょう。
百貨店やスーパーマーケットなどでは、
商品が消費者に販売されると同時に仕入れ先からの商品仕入が計上される、いわゆる消化仕入と呼ばれる商品売買契約を仕入れ先と締結していることが一般的です。
このため、日本の百貨店等では、売上と仕入が同時に計上されます。
しかし、契約に基づく義務に着目すると、
百貨店等の義務は商品を消費者に受け渡すことではありません。
百貨店等の義務は「場所貸し」若しくは「代理人取引」と考えられるのです。
この百貨店等の義務に対しての対価の額は、現状の百貨店等の売上高から仕入高を控除した金額と考えられるのです。
例えば、100億円の売上があり、90億円の仕入が計上されている百貨店があるとします。
日本の現状会計基準では、売上は100億円ですが、この会計基準の適用によって、売上高10億円になる可能性もあります。
いわゆる粗利は同額ですが、売上高100億円の会社と10億円の会社では規模間の印象が随分異なりますね。
と、このような影響が考えられます。
【適用時期は・・・】
3月決算法人の場合,平成31年3月期からの早期適用が可能
平成33年4月1日以後開始事業年度より強制適用になります。
この基準の適用によって、法人税法も一部改正されると思います。
【まとめ】
企業の根幹を成す収益に関する包括的な会計基準であるため、自社にどのような影響があるかはかり知れません。
そのため、自社にどのような影響があるか専門家に相談してみることをお勧めします。
その相談相手の専門家の候補には是非弊社を入れてください。(切実)
若しくは他の記事も閲覧していってください。(こちらも切実)
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