【百貨店やスーパーに影響か】収益認識に関する会計基準の導入による影響
皆さん、こんにちわ。
名古屋市中川区高畑に事務所を開設している税理士法人トラストブリッジです。
今日は、収益認識に関する会計基準の導入における「本人と代理人取引」への影響について考えてみたいと思います。
これはわかりにくい概念ですが、例えば消化仕入等を行っている百貨店やスーパーなどの小売業に影響があるといわれています。
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【本人取引、代理人取引とは・・・・】
本人取引とは、顧客との約束の性質が、財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務を追っている取引を言います。
代理人取引とは、顧客との約束の性質が、財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配する履行義務である取引を言います。
【それぞれの会計処理は・・・・】
本人取引として認識された場合 :収益は総額で計上
代理人取引として認識された場合:収益は純額で計上
収益を純額で計上するとは、他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した額を言います。
つまり、手数料部分のみを収益で計上することとなります。
これは、売上総利益には影響はありませんが、売上高に大きな影響を与えます。
100億の売上を誇る会社が20億程度の売上は減少することも容易に予想されます。
この論点では、企業が契約当事者の本人に該当するか、代理人に該当するかの判断が最も重要になります。
【本人取引と代理人取引の判断手順は・・・】
前述の通り、本人取引と代理人取引は、履行義務の性質が異なります。
本人取引の場合は、企業自らが財又はサービスを提供する義務を負っていますが、代理人取引の場合は、財又はサービスが提供されるように手配する履行義務を負っています。
企業がどのような履行義務を負っているかを判断する手順は以下のように行うこととされています。
(1) 顧客に提供する財又はサービスを識別すること
(例えば、顧客に提供する財又はサービスは、他の当事者が提供する財又はサービスである可能性がある。)
(2) 財又はサービスのそれぞれが顧客に提供される前に、当該財又はサービスを企業が支配しているかどうかを評価すること
このうち、(2)の財又はサービスを企業が支配しているかどうかの評価が実質的判断の拠り所になります。
財又はサービスを支配している企業が本人と認識されます。
【財又はサービスを支配しているとは・・・】
本会計基準では、財又はサービスを支払いしているとは、総合的に判断するものとして、
企業が本人に該当することの評価に際して、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮するとされています。
(1) 企業が当該財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること。
通常、財又はサービスの受入可能性に対する責任(例えば、財又はサービスが顧客の仕様を満たしていることについての主たる責任)が含まれます。
つまり顧客への財又はサービスへの最終責任を有している場合は、その財又はサービスを支配していると考えられます。
また本会計基準では、財又はサービスを提供する履行義務を企業が自ら充足する場合のみならず、企業に代わり外注先等の他の当事者に履行義務の一部又は全部を充足させる場合も、企業が本人に該当する可能性があると言及しています。
つまり例えば、
建設業界のようにゼネコンが顧客から依頼を受けた工事を他の業者に委託する場合でも、最終責任を負っているゼネコンが本人に該当する可能性が高いということになります。
(2) 企業が在庫リスクを有していること(顧客への移転前後を問わず)
顧客との契約を獲得する前に、企業が財又はサービスを獲得する場合あるいは獲得することを約束する場合には、
当該財又はサービスが顧客に提供される前に、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力があることを示す可能性があると判断されます。
つまり、在庫リスクを有している場合には、本人に該当することが高いといえます。
しかし、単に仕入を行っていることが在庫リスクを有しているとは判断されませんので留意してください。
この点、本会計基準では、「財に対する法的所有権が顧客に移転される前に、当該法的所有権を企業が一時的にのみ有している場合には、法的所有権を有したとしても、企業は必ずしも当該財を支配していることにはならない。」とされています。
つまり、百貨店やスーパーなどで顧客への販売と同時に仕入を行っているいわゆる消化仕入と言われる取引には、一時的な所有権の移動をもって、必ずしも本人取引には該当するわけではないと明らかにされています。
(3) 当該財又はサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること
財又はサービスに対して顧客が支払う価格を企業が設定している場合には、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力があることを示す可能性があります。
ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もありますので留意が必要です。
上記の(1)~(3)は例えばという記載の方法ですので、総合的に判断することになると思います。
その場合は、原則に立ち返り企業がどのような履行義務を負っているかを検討することが望ましいといえます。
しつこいようですが、本人が財やサービスを提供する義務を負っている場合は本人取引、提供するように手配すること義務を負っている場合には代理人取引になるのが、大原則です。
【まとめ】
本人取引 :総額
代理人取引:純額
上記の判断は、本人が財やサービスを提供する義務を負っているか、提供するように手配すること義務を負っているかで判断するとご理解ください。
消化仕入やマッチングビジネスにおいて、総額で売上を計上している日本企業は多いと思います。
これは国際的には実質の売上を計上しておらず、投資家の判断を誤らせているのではないかと批判されておりました。
この点、古典的な我が国の会計基準では、どのような会計処理を行うか明記されておりませんでした。
今後は本会計基準踏まえ、会計処理することが求められますので、留意してください。
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